SEPTEMBER, 2023 >> JANUARY, 2024

KYOTO SEIKA UNIVERSITY

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ナオミ・リンコン・ガヤルド「ホルムアルデヒド・トリップ」

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Photo: Fabiola Torres Alzaga, courtesy of the artist.

メキシコを拠点に活動するナオミ・リンコン・ガヤルドによる『ホルムアルデヒド・トリップ』を、上映パフォーマンスと展覧会の2つの形式で紹介します。(日本初演/初展示)

自らを「グローバル・サウス出身の有色のクィアで脱植民地のフェミニスト、ビジュアル・アーティストで、抜け目ない研究者」と語るガヤルドは、近年、人種・民族・ジェンダー・セクシュアリティ・階級といった様々な権力関係を交差的に分析し、リサーチにもとづき神話的な世界観を練り上げています。

2017年に発表された本作は、先住民の土地や女性の権利を守るために活動し、2010年に凶弾に倒れたベティ・カリーニョ(1973-2010)が冥界を旅する物語です。新大陸の探検家によってホルマリン液で保存されたアホロートル(メキシコサンショウウオ)がガイドとなり、過去と現代におけるネオコロニアルな環境をたゆたう亡霊や精霊たちと共に、視る者を黄泉の国の旅路へと案内します。

All photos: courtesy of the artist.

作品について

本作品から私が受け取ったのは、「あなたは、クィアな何かになれる」「別のかたちの世界に憧れ、欲望することをあきらめるな」という強いメッセージでした。
グローバルな資源の収奪が引き起こす格差と暴力の問題を抱えるメキシコの社会に暮らす者と、日本の社会に暮らす者とは、互いに遠い他者のように思えるかもしれません。
しかし、ガヤルドの別の世界を想い描こうとするエネルギーは、私たちの足元をも照らし、あなたや私と他者が共にいる世界を想像させ始めます。プログラムCではその経験を参加者の皆さんと共有し、私たちがどのような未来に行きたい/生きたいのか共に考えたいと思います。
(内山幸子・本事業プロジェクトコーディネーター)


 

「ホルムアルデヒド・トリップ」は、凶弾に倒れたミシュテカの環境保護アクティビスト、ベティ・カリーニョ(1973-2010)が冥界を旅する様子を想像した作品である。

この政治的かつシュールレアリスム的な時を超える旅には、メソアメリカの神々や魔女、動物などが多元宇宙より来たる仲間として加わり、ベティの遺したものが果てなく広がるよう、彼女と共に歩んでケアをする。ベティは自らが殺されたその瞬間を起点に、死者の世界から語り掛ける。

その旅は、彼女がメキシコの月の女神コヨルシャウキへと変貌してゆくプロセスそのものだ。グロリア・アンサルドゥーアによれば、夜の力を体現するコヨルシャウキは、バラバラにされた自らの体を繋ぎ合わせることで重傷から回復する力を持っているという。

アンサルドゥーアの「コヨルシャウキの急務」論は、まさにこの力から誕生した議論である。また本作には、ホルマリン漬けにされたアホロートルが、語り部、教育を受けたガイド役の先住民、アレクサンダー・フォン・フンボルト(ドイツの博物学者・探検家。1769-1859)の欲望/研究の対象、増えゆくディルド、癒しのカプセル、そして過去と現代における植民地的なエクストラクティビズムの間をたゆたう亡霊めいた存在として登場する。

(オーディオ言語:スペイン語・英語・ドイツ語/2017年)*日本語字幕付き

字幕翻訳:林かんな
字幕制作協力:有限会社ホワイトライン

アーティストについて

ナオミ・リンコン・ガヤルド Naomi Rincón Gallardo
アーティスト

ナオミ・リンコン・ガヤルド(1979年生まれ)は、メキシコシティとオアハカを行き来して暮らし、活動するビジュアルアーティスト。
脱植民地主義的クィア(cuir)の視座から、リサーチに基づきつつ批判的観点を取り入れた神話的な世界観を練り上げ、ネオコロニアルな環境における対抗世界の創造について考えている。
シアターゲームやポピュラーカルチャー、メソアメリカの宇宙論、スペキュレイティブ・フィクション、土地特有の祭礼や工芸、脱植民地主義的フェミニズム、そしてクィア・オブ・カラー(有色のクィア)批評への関心を融合させた作品が特徴。ウィーン美術アカデミーの実践プログラムで博士号を取得。
近年の展覧会やパフォーマンス公演に、マドリードのLa Casa EncendidaにおけるTzitzimime Trilogy〔ツィツィミメ三部作〕(2023年)、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2022年)、第34回サンパウロ・ビエンナーレ(2021年)、オアハカ現代美術館におけるUna Trilogía de Cuevas〔洞窟三部作〕(2020年・単独公演)、クンストラウム・インスブルックにおけるMay your thunder break the sky〔あなたの雷が空を砕かんことを〕(2020年・単独公演)、第11回ベルリン・ビエンナーレ(2020年)、メキシコシティのエル・エコ実験美術館におけるHeavy Blood〔重き血〕(2019年・単独公演)がある。

https://www.naomirincongallardo.net/

ライブ・ミュージシャンについて

サン・チャ San Cha
シンガーソングライター

メキシコ系アメリカ人として育ったサン・チャは、いくつもの文化よりなる波を呼び出し、様々なジャンルが混ざり合う形で美しく衝突させる。楽曲づくりにおいても、感情表現やストーリーテリングにおいても、多様な選択肢の中から最高のものを選び出すのが彼女のスタイルだ。その声は、忘れえぬ痛みの歌と荒ぶるダンスナンバーの間を自在に行き来する。
サン・チャは2016年にデモ音源「Me Demandó」を発表し、続いてクンビアのテイストを取り入れたEP「Capricho del Diablo」をリリース。これらを聴いたレッドブルからのアプローチにより、ボナルー・ミュージックフェスティバルで開催されたレッドブル・ミュージックアカデミーのベースキャンプに、国を代表する新進気鋭のプロデューサー/ミュージシャンのひとりとして参加することとなる。続くアルバム「La Luz de la Esperanza」は批評家の賞賛を集め、ピッチフォークでは「人生をかけたアート作品だ。長年の苦労と成長の融合であり、ハリスコ州の牧野とサンフランシスコのクィア・クラブで創り上げられたスタイルである」と評された。以来、ミュージック・センター、ゲティ・センター、フォード・シアター、LACMA、ハウザー&ワース、ヴィビアナ大聖堂など屈指の会場で公演を行っている。
サン・チャは、メキシコ系としての自らのルーツを起点にポピュラーカルチャーの型を転覆させることで、音楽界にその足跡を残してきた。これには彼女という人物像を丸ごと捉えたオリジナルなサウンドの力も大きい。未完のシングルシリーズ「Processions」におけるサン・チャの声は、彼女の音楽に欠かし得ぬ要素として朗々と響くだけでなく、彼女が音楽業界においてまたとない存在であることを証明している。

https://www.churchofsancha.com/

 

ダニシュタ・リヴェロ Danishta Rivero
インプロヴァイザー、パフォーマー、サウンドアーティスト

カリフォルニア州オークランドを拠点とする。高度にプロセシングされた肉声と、そのアコースティックな共鳴との関係を探求している。実験主義、自由即興、エレクトロ・アコースティック音楽、パフォーマンス、マルチメディア、そしてサウンドアートの連続体が、経・横の糸となってダニシュタの芸術実践と問いの礎をなす。ソロ活動にあたっては、嘆けば雪崩が起きるという山の精にちなんでCaribay(カリバイ)名義を用いることもある。パーカッショニストのジェイコブ・フェリックス・フーレとのエレクトロ・アコースティック・デュオVoicehandlerの他、 アレクサンドラ・ブシュマン゠ロマンとのフェミニスト・トロピカルノイズ・デュオLas Suciasとしても活動している。

http://www.danishtarivero.com/

当日パンフレット(PDF)
関連プログラム

展覧会『ホルムアルデヒド・トリップ』
日時|2024年1月13日(土)~28日(日)13:00-19:00 *水・木曜日休廊
会場|Gallery PARC
★詳細はこちら

ナオミ・リンコン・ガヤルド アーティスト・トーク
日時|2024年1月13日(土) 16:00-18:00
会場|京都芸術センター・大広間(西館2階)
★詳細はこちら

開催概要
日時

2024年1月14日(日) 17:30開場/18:00開演 *上演は約1時間予定

会場

京都芸術センター・フリースペース(南館1階)
https://www.kac.or.jp/

定員

100名(要事前申込・2024年1月13日締切)

《当日受付について》
おかげさまでご予約で満席となっておりますが、お席に空きが出た場合に、整理券順にご案内します。整理券は17:30より配布します。
料金

無料

鑑賞サポート

《無料託児サービス》
若干名受け付けます(先着順)。
2024年1月6日(土)までに下記のフォームからお申し込みください。
無料託児サービス申込フォーム

☆プログラム参加にあたりサポートが必要な方は問い合わせ先までご相談ください。できる限り対応させていただきます。

会場へのアクセス

住所:京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2
〇JR「京都」駅から地下鉄烏丸線に乗り換え「四条」駅下車、22・24番出口から徒歩5分
〇阪急京都線「烏丸」駅22・24 番出口から徒歩5分
〇京阪本線「三条」駅より地下鉄東西線・烏丸線「烏丸御池」駅下車、4番出口から徒歩10分
〇京都市営バス「四条烏丸」下車、徒歩5分(3・5・201・203・207系統など)