#1 パズルのかけら

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©Kate Dalton

トロントは居心地がいい。舌に心地いい料理に、目に心地いい眺め。トロントでは多様性を感じられる。私という人間はまさにその文化のるつぼから生まれてきたんだと思う。

トロントという都市は巨大なパズル盤のように広がっていて、異なる民族、グループ、コミュニティ、特定のノリや文化を好む人たちの集う界隈が、ピースのように敷き詰められている。時に、それらのピースはぴったりと噛み合う。またある時はピースの縁どうしが衝突を起こし、そのインパクトが日常を至るところで揺るがす。私はいつもそうした不揃いな断片を跨いで進む。自分を形づくるものも含めて、たくさんの人種・アイデンティティ・境遇を股にかけ、しなやかに歩きながら。一人のランウェイは孤独だけど、できるだけ堂々と歩きたい。トロントの町の喧騒がそれを助けてくれる。急かされるような忙しい暮らしは、実のところクセになる。

トロントでは時折すごく自由を感じる。両性的な、時に攻めたファッションで身を固め、自分がどんな人間かを恥じることなく表現する。トロントのダウンタウンではみんなが町を闊歩しながら自分を盛り立てていて、ファッションショーのようにさえ見える。私も腰を揺らして背中で髪を弾ませながら、喜んで同じ足取りで歩いてみせる。自分の存在を感じられる、一つの解放のあり方だ。そうやって息を弾ませて歩く時、胸は充実感でいっぱいになる。

でも、時に、トロントを息苦しく感じることもある。脇目もふらずに歩いていても、品定めの眼差しからは逃れられない。私の属性、ちぢれた髪の毛、女性的なところ、醸し出す雰囲気。その全部が、私のような歩き方を絶対にしない人たちからの、監視やジャッジの対象になる。向こうの手口はいろいろで、直接的な攻撃から遠回しにえぐってくるやり方までレパートリーには事欠かない。それらのすべてに私は傷ついてしまう。

今いるこの土地は、私の祖先たちの血と汗と涙によって耕され踏み固められてきた。その同じ土地の上で、私はのけ者にされている。考えただけでぐったりする――ただでさえ自分が何者かを探し当てる闘いの最中にいるのに、更なる困難の上乗せなんて。笑顔に張りがない日や、いつもみたいに明るく振舞えない日もある。そういう時は母のお祈りと自分の大望を胸に、暗い気分を振り払う。

それでもなお、トロントは居心地がいい。その居心地の良さが、どこへ行っても見つかるものであってほしい。同じような特徴を持った、未知の場所へと足を踏み出したくて気持ちがはやる。こことは別の、文化や互いへの寛容さ、そして希望の生まれる場所で、そこに走る溝さえも乗り越えて歩いてみたい。自分の都市が奏でるビートには余裕で乗れるけど、もし心動かす旋律に出会えるなら、聞いたことのない交響曲にも包まれてみたい。トロントには多様性の感覚がある。その多様性には他の場所でも出会えることを、私は知っている。そこへ行く時は、私の都市のパズルのかけらを一つ持っていこう。

ぴったりとははまらないかもしれない、でもそれには慣れっこだ。

著者プロフィール

ザカーリア・ハイゲート

オンタリオ州・トロントで生まれ育ち、16歳の頃からラッパー、シンガー、ソングライター、パフォーマーとしてスキルを磨いてきた。アフロ・インディジネス（訳注：黒人と先住民の両方のルーツを持つこと）とインド・ゴアにルーツを持つユニークなスタイルのアーティストとして、自身の体験に根付く新しいトロントの音楽を提示している。その音楽は自身の苦労や葛藤をテーマにしながらも、未来への希望に光を当てるものにもなっている。現在スタジオで、近日リリース予定のEPの収録曲を含む新曲の制作を行っている。ビデオグラファーでもあり、短編映画やvlogの制作に取り組んでいる。またトロントのデザイナーのためにモデルを務めることもある。
WEBサイト https://linktr.ee/ZachariahHighgate
Youtube https://www.youtube.com/channel/UChHx7plV33QngUeTfhnj6_Q
Instagram @ZachariahHighgate

（訳=吉田守伸、監訳=佐藤まな）

次回、12月中旬更新予定